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クリューシステムズが実現した AI搭載カメラは、監視カメラの可能性を広げる

ディープラーニングの進化に端を発した現在のAIブーム。すでに、さまざまな場面で実用化されており、私たちのビジネスや日常生活においていろいろな形で利用されている。さらに、AI技術の発達によって、これまでAIが使われていなかった場面においても、AIを積極的に活用しようとする動きも広まっている。

監視カメラとその映像をクラウドで管理するソリューションを提供しているクリューシステムズでは、「NVIDIA® Jetson™」によって監視カメラにAIを搭載した。その開発ストーリーと、AIカメラの可能性について同社の山本有二郞氏から、同社のAIカメラ開発を支援した菱洋エレクトロの大上誠とともに話しを聞いた。

  • 課題

    クリューシステムズはAIカメラの開発にあたり、ソフト面ではアルゴリズムの開発、ハード面ではファンレス構造での熱対策を課題としていた。
  • 解決策

    AIに関して多くのプレイヤーをもつNVIDIAの製品の中から、組み込みやすいサイズとパッケージングが特徴のJetsonを提案した。熱対策には筐体の底にヒートシンクを付けることでファンレスでの冷却を可能とした。
  • 効果

    NVIDIAの製品は画像の判定と学習に同じアーキテクチャのGPUを使用できるため、アルゴリズムの開発効率が良く、あらゆるニーズに柔軟に対応できる。
    ファンレスでの冷却は屋外でのカメラの設置を可能とした。
    AIカメラの実現は従来の監視カメラでは不可能であった場所への設置や、AIによる画像の分析を可能にする。

プロジェクトメンバー

  • 株式会社クリューシステムズ
    営業本部
    担当部長
    山本 有二郎氏

  • 菱洋エレクトロ株式会社
    ソリューション事業本部
    ソリューション第5ビジネスユニット
    営業第1グループ
    大上 誠

AIカメラは従来の監視カメラの制約を超える

現在、AIによる画像分析技術は広く普及しており、監視カメラで撮影した映像をAIによって分析するソリューションもすでに存在している。だが、クリューシステムズでは、カメラそのものにAIを搭載することで、新たな価値を生み出すことに成功した。その発想のきっかけを、山本氏は次のように語る。

「弊社はこれまでクラウドを強みとしてサービスをして参りました。これまでの監視カメラのAI分析は、大量の画像をクラウドに送り込む必要があるため、クラウドや回線のコストが掛かるという課題が見えていました。そこで、弊社の強みであるエッジ側のカメラにAIを搭載すれば、新たな可能性があるなと気がつきました」(山本氏)

これまでの監視カメラ市場は、機能や性能が均質化しており、過当競争に陥っているという。また、クラウドによる画像のAI分析は、カメラの膨大なデータをクラウドに集めるために大きな投資やランニングコストが必要で、すぐに導入しづらい。そこで、新たな付加価値を生み出せるものとして、AIカメラの開発に取り組んだのだという。

山本氏はカメラ側、すなわちネットワークのエッジにAIアルゴリズムを搭載することで、さまざまなメリットがあるという。例えば、屋外に監視カメラを設置する場合、通信回線に制約が生じる。通信ケーブルを引くことができない場合、LTEなどのデータ通信回線を利用することになるが、カメラの映像をそのまますべて転送すると、回線コストが非常に大きなものとなってしまう。

「これまでのカメラと違い回線といった制約がなく、いろんなところに置ける。AIカメラがいろんなところに置けることで、今までになかった発想のサービスができるのです。例えば、街から遠く離れた自然環境の中に設置して解析をすると、自然災害に対する分析が実現するかもしれません。そういった可能性がこの機械にはあるのです」(山本氏)

AIカメラならば、カメラのなかでさまざまな分析を行い、その結果であるメタデータだけを通信することができるため、回線コストを大幅に下げることができる。また、回線コストが下がるということは、カメラの設置に掛かる制約も小さくなり、より広いエリアやさまざまな環境にカメラを設置できることにもつながる。つまり、新たな映像監視ソリューションの可能性が、飛躍的に高まるのだ。

 

AIカメラの実現に菱洋エレクトロがNVIDIA Jetsonを推した理由とは

監視カメラにAIを搭載する。アイデアとしては非常にシンプルだが、その実現はさほど簡単ではなかったという。また、市場を見渡しても、まだAIカメラはどこにも存在していなかった。

「まだ実現している会社がなかったので、開発はすべて手探りでした。最初の時点で大きな課題となったのは、AIカメラのAI部分、つまりアルゴリズムをどうやって作るかです。ハードウェアが完成しても、アルゴリズムがなければ成り立ちません。だから、アルゴリズムの開発にあたっては開発ベンダーと協働する必要がありました」(山本氏) 

AIカメラは、いわばプラットフォームのようなもので、その上でさまざまなAIを動かすことで、ユーザー側のニーズに応じた機能を実現できるし、後からでもアルゴリズムの改良によって分析精度を上げたり、機能を追加したりといったことができる。ただし、そうしたハードウェアとソフトウェアが相互に補完し合う仕組み、つまりエコシステムを実現するためには、初めからそれを意識したハードウェアを作る必要がある。そこでクリューシステムズが頼ったのが菱洋エレクトロだった。

「私たちはお客様から、コンサルティングのようにご相談をいただくことが多いんです。クリューシステムズさんも、従来の単機能の監視カメラではなくて、今後はそういったAIを乗せてフレキシビリティを高めるソリューションを望まれていたので、弊社としてはNVIDIAのJetsonを提案しました」(大上)

なぜ、Jetsonだったのか。

その理由は、「手の平に載るサイズに、CPUやGPUにメモリなどすべての機能が入っていて、これだけで一つのコンピュータとして完結している」という、組み込み易いサイズとパッケージングにある。

NVIDIAは、昨今のAIブームのなかで、非常に大きな注目を集めた半導体メーカーで、パソコンで高度な3Dグラフィックを動かすための半導体「GPU(グラフィック・プロセッシング・ユニット)」を強みとしていた。そのGPUが、3DグラフィックだけでなくAIアルゴリズムも高速で計算できることから、AIを利用するさまざまなソリューションにおいてNVIDIAのGPUが利用されている。そのため、AIエンジニアは、NVIDIAのGPUで動くAIアルゴリズムの開発に習熟していることが多いのだ。

そして、菱洋エレクトロが、クリューシステムズにJetsonを勧めた最大の理由もそこにある。

「ディープラーニングというAIの手法がブームになった時、それを先頭に立って引っ張ってきたのがNVIDIAという会社です。ですから、画像をAIで処理するうえで、NVIDIAのGPUを使ったソリューションが、もっとも進んでいます。そしてJetsonなら、NVIDIAのGPUをカメラに組み込むことができます」

「NVIDIAのGPUは、AIで画像を判定するエッジ側と、AIを学習させる側のコンピュータとで、同じアーキテクチャのGPUを使うことができます。だから、AIカメラを実現する時にアルゴリズム開発効率が良い。それが大きなポイントです」(大上)

この点が、クリューシステムズにとっても、非常に魅力的だったという。

「NVIDIAはハードウェアの性能もさることながら、周辺にAIに関連したいろんなプレイヤーが集まっています。それは非常に有益」と山本氏は語る。

つまり、AIに関連した製品を開発するうえで、頼ることができる相手が多いということだ。AIカメラのように、これまで市場にない製品を開発するうえで、相談できる相手は多いに越したことがない。

こうした菱洋エレクトロのアドバイスを得て、クリューシステムズはAIカメラの心臓にNVIDIAのJetsonを選ぶこととなった。

 

Jetsonのファンレス実現がAIカメラの可能性を広げる

AIカメラを開発するなかで、ソフトだけでなくハード面でも困難はあった。その一つが、発熱の問題だ。もともと監視カメラにGPUを搭載することがなかったうえ、高性能GPUは動作時に発熱を伴う。そのため、GPUを搭載したJetsonを冷却するための仕組みが必要となる。

屋内用のAIカメラは電動ファンを内蔵し、これによってJetsonを冷却している。一方、難しかったのが屋外用だ。なぜなら、屋外用はさまざまな環境での利用を想定しており、防水防塵を実現するためには完全に密閉する必要がある。つまり、ファンによる冷却が不可能なのだ。

「Jetsonをファンレスで使う事例は沢山ありますが、しっかりと熱対策をする必要があります」(大上)

「熱処理については、エンジニアがかなり工夫しました。熱対策のために筐体の容量を大きくして、底にヒートシンクを付けて、熱を逃がす構造になっている」(山本氏)

ファンレス構造:熱対策として筐体の底にヒートシンクを付けて、外に熱を逃がす構造

 

監視カメラという製品の性質上、あまり目立たないことも求められるため、ケースのサイズにはどうしても制約が出てくる。だが、AIカメラの性能を常に100%活用するためには、冷却性能も犠牲にできない。さまざまな条件のもとにサイズを決め、そして実際に長時間に渡る負荷試験で内部の温度も測定しながら、最終的に密閉でも問題なく冷却できる筐体の設計にたどり着いた。

屋外用のAIカメラは、防水防塵を達成したことに加えて、前述の通りLTEによるデータ通信回線を搭載していることから、電源さえ確保できればさまざまな環境へと設置できる。このことで、従来の監視カメラにはなかった新たな可能性を生み出すことにつながっている。

例えば、防災面での活用だ。従来でも監視カメラによって自然災害が発生しやすい地域を監視していたが、クリューシステムズのAIカメラならば、搭載したアルゴリズムによって自然環境の変化を捉え、実際に危険が迫った時にだけアラートを出し、映像を転送するといった使い方をすることで、回線コストを下げられるうえに、さまざまな環境に設置できる。

他にも、カメラの画像データを大量に蓄積しながら、活用できていない事業者も多いが、そうした事業者に対して、AIカメラによる新しいソリューションを提案することもできる。

「AIカメラは一度取り付けてからでも、クラウドからカメラを制御しているので、クラウド経由でアルゴリズムを入れ替えることができます」

「データというものが、ものすごい価値があるというのは、より強く感じています。データによってアルゴリズムの精度を上げることもできるので、そうした活用をユーザーに提案していきたい」

「今後、想像もしないようなニーズが、出てくるかもしれない。それに対応していくことが求められているので、アルゴリズムベンダーや菱洋エレクトロさんなど、周りと協力してやっていきたい」(山本氏)

今、私たちの社会はAIによって新たな進化を遂げようとしており、例えば自動運転が実現すれば人々の移動や待ち合わせといった行動や習慣が変化すると言われている。

クリューシステムズは、AIカメラでお客様の生活の役に立つアイディアを実現する新しい社会インフラの提供を幅広く展開し、社会への貢献を目指している。

AIを活用したソリューション

菱洋エレクトロでは、このクリューシステムズのAIカメラを利用した丸紅ネットワークソリューションズの「TRASCOPE AI(トラスコープAI)」を多くのユーザーに提案している。
TRASCOPE AIはクラウド型AI監視ソリューションだ。ネットワーク工事が不要なため、電源を確保できればすぐに利用できるのが特徴で、さまざまなニーズにフレキシブルに対応できるので、少ない投資で本格的なAIカメラの導入につながりそうだ。またセキュリティ強化だけでなく、ユーザーのサービス価値向上を実現できる。

TRASCOPE AI利用例

  • オフィスビルやショッピングセンターの大型駐車場:入庫時にナンバープレートを検知し、車種や車高に応じて平面や機械式車庫の空き状況に合わせて車両を誘導 。蓄積したデータはマーケティングデータとして活用できる。
  • リゾートホテルや娯楽施設:防犯カメラとして設置し、混雑情報を顧客に提供することで混雑の解消につながる(繁忙に応じた増設も可能)。
  • 建設現場や工場:人間を骨格で認識し、保護用具の着用有無や細かい動作などを監視。建設現場の場合は、現場間の移設も容易にできる。

協力:丸紅ネットワークソリューションズ株式会社
澤田勝美氏

 

会社名 : 株式会社クリューシステムズ

企業URL : https://www.crew-sys.com/

業種  : その他の事業サービス業

事業概要: AIプラットフォーム事業 、クラウド型監視事業、動画テレマティクス事業

本社住所: 〒100-0013 東京都千代田区霞が関3-2-6 東京倶楽部 ビルディング8F

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