RYOYO_brandlogo_rgb

RYOYO_brandlogo_rgb

E-mail Icon

コニカミノルタの画像IoTプラットフォーム「FORXAI」、事業加速の鍵はNVIDIA® Jetson™ を採用した「スターターキット」

コニカミノルタは、150年前にカメラや写真関連資材の取り扱いを始めてから現在に至るまで、イメージング領域に強みをもつメーカーだ。近年は長年培った技術力を基盤に、複合機や商業プリントなどの印刷分野からヘルスケア、インダストリー分野などにも事業の幅を広げている。

2020年11月には画像IoTプラットフォーム「FORXAI(フォーサイ)」を立ち上げた。コニカミノルタが持つ画像技術と最新のIoTやAI、さらにパートナー企業のアセットを組み合わせることで、AIやIoTの導入にあたって事業課題を抱える企業を支援し、ひいては社会全体のDX推進を目指している。

菱洋エレクトロは、FORXAIにパートナー企業として参画しており、AIを動作させるデバイスとしてNVIDIA® Jetson™ 搭載のPCを供給するだけでなく、コニカミノルタと協働し、さまざまなソリューションの開発や現場での価値・性能の検証を容易にする開発支援キット、いわゆる「スターターキット」を同社のソリューションパートナー(※)に提供するための開発に取り組んでいる。
(※)ソリューションパートナー:FORXAI技術を活用し、社会のDXを加速させるためのソリューションを共に企画/開発/販売するパートナー

コニカミノルタの吉澤将則氏(FORXAI事業統括部 ソリューション開発部 第1グループリーダー)と小林美奈子氏(FORXAI事業統括部 ソリューション開発部 第1グループ アシスタントマネジャー)、そして同社を担当する菱洋エレクトロの斉藤岳夫(八王子支店 支店長 兼 横浜支店 支店長)と宮尾風希(ソリューション事業本部 ソリューション第5ビジネスユニット 営業第1グループ)に、スターターキット立ち上げの経緯と狙いについて話を伺った。

  • 課題

    コニカミノルタの画像IoTプラットフォーム「FORXAI」を本格的に事業展開するにあたり、現場でAIを安定して動かせる精度の高いデバイスが揃っていなかった。
  • 解決策

    NVIDIAのGPUを搭載した高性能な小型エッジaコンピューターをFORXAI認定デバイスとして提案。さらに、コニカミノルタの画像技術やAIソフトウェアを動かすための産業向けデバイスのほか、周辺機器などを組み合わせたスターターキットの立ち上げも合わせて提案した。PoCだけでなく、実環境での利用まで想定した製品の組み合わせである。
  • 効果

    FORXAI認定済みかつハイパワーな最新GPUを搭載したデバイスが加わっただけでなく、スターターキットによりユーザーへの提案がしやすくなり、提案の幅も広がった。ユーザーにとっては、デバイスの選定が不要で気軽に試すことができるうえ、実際の現場で使用した際のパフォーマンスで検証できるため、効率的に開発できる。今後もコニカミノルタやFORXAIパートナーと協創し、幅広い製品をすぐに試すことができる仕組みを構築することで、お客様の細かなニーズに沿ったソリューションの開発を目指す。

プロジェクトメンバー

  • コニカミノルタ株式会社
    FORXAI事業統括部
    ソリューション開発部
    第1グループ グループリーダー
    吉澤 将則 氏

  • コニカミノルタ株式会社
    FORXAI事業統括部
    ソリューション開発部
    第1グループ アシスタントマネジャー
    小林 美奈子 氏

  • 菱洋エレクトロ株式会社
    八王子支店 支店長
    兼 横浜支店 支店長
    斉藤 岳夫

  • 菱洋エレクトロ株式会社
    ソリューション事業本部
    ソリューション第5ビジネスユニット
    営業第1グループ
    宮尾 風希

創業150年で蓄積した画像技術の集大成

コニカミノルタは、カメラなどの写真関連事業を手がけていたコニカとミノルタが、2003年に経営統合して誕生した。コニカは、1873年に小西屋六兵衛店で写真材料の取り扱いを開始しており、2023年で創業150年を迎えている。

現在は、画像関連技術をコアに、複合機などのオフィス向け機器とITサービスを組み合わせた「デジタルワークプレイス事業」、商業用デジタル印刷機をはじめとする「プロフェッショナルプリント事業」、医用診断機器やサービスを手がける「ヘルスケア事業」、光源色計測機器、機能性フィルム、インクジェットヘッドなどの「インダストリー事業」の4つの事業を展開している。

「写真事業から始まった歴史ある会社として、お客様の『みたい』というニーズに応えるために、高精細なデジタル印刷機や医用X線の動画撮影などさまざまな製品やサービスを提供しています」(吉澤氏)

そして2020年11月には、コニカミノルタがもつ画像関連技術とAIを組み合わせた画像IoTプラットフォーム「FORXAI」をスタートした。同社の小林氏は「私たちがもつ画像に関わる技術を、社内だけでなく社外でも使っていただき、世の中に広げていくためにスタートした」と、その狙いを話す。

そのコニカミノルタが持つ技術を広げる鍵になるのがAIとIoTだ。吉澤氏は、FORXAIのきっかけについて「我々が培ってきた画像技術をAIおよびIoTと組み合わせることで、より幅広い価値提供ができるのではないか、社会課題に貢献できるのではないか」というところからスタートしているという。

だがAIもIoTも現在、急速に進化しており、またそのニーズやユースケースも急速に拡大している。最新の技術を多様な領域で活用していくためには、ひとつの企業だけでは限界がある。

そこでコニカミノルタが持つ技術だけでなく、画像関連技術をもつ多くの企業と「技術パートナー」という形で、さらにそれを活用できる技術とアイデアをもった企業と「ソリューションパートナー」という形で提携した。「画像×AI×IoT」を軸にさまざまな企業が関わるエコシステムの構築を図り、産業領域における新たなプラットフォームビジネスを確立しようとしているのだ。

FORXAIパートナープログラム概要図

「AI、デバイス、IoTの3つの柱によって世界中に存在するカメラなどの映像機器を活用し、新しい価値を生み出していきます」(小林氏)

「当社はイメージング技術とアプリケーションによるソリューションをワンストップで提供できる強みがありますが、得意な領域は限られています。当社が持っていない技術や市場に対してアプローチできるパートナー様と組んでいく考えです」(吉澤氏)

現在、FORXAIのパートナー企業は国内外の技術パートナーとソリューションパートナーを合わせて、61社。これらの企業は、コニカミノルタがイメージング関連事業の中で取引を行ってきた企業を中心に声を掛けた結果、集まったのである。広告や宣伝といった大規模な募集活動を行わずにクチコミだけで集まった、いわば仲間のようなものだ。

「各社様と深く関係を構築しながら本気で協業をしていこうという当社の思いに賛同していただいたパートナー企業様が集まった結果が61社です。これが多いのか少ないのかは判断できませんが、深くお付き合いをさせていただいています」(吉澤氏)

菱洋エレクトロも、そうした仲間の1社として加わった。菱洋エレクトロはこれまで、コニカミノルタのヘルスケア事業に対するITソリューションの提供を中心に、20年以上に及ぶ取引関係を築いてきた。今回はFORXAIという新規事業に対してハードウェアを提供する技術パートナーという、新たな関係を築くことになったのだ。

FORXAIデバイス認定プログラムの仕組み

その経緯を菱洋エレクトロの斉藤は、「コニカミノルタ様と付き合いを広げたいという思いがあった中で、FORXAIのパートナープログラムが目に留まった」と話す。そして、実際にコニカミノルタにアプローチし、コミュニケーションを取っていく中で、さまざまな状況とタイミングが見事合致し、スターターキットという形で実を結ぶことになった。

プラットフォーム普及の鍵はスターターキット

2020年11月にスタートしたFORXAIだが、スタートからの3年間はパートナー企業を募り技術について連携を深めたり、内部での技術検証を行ったりするなど、土台作りに取り組んできた。そして2023年度から、マネタイズすなわち本格的な事業展開を目指した活動を開始するという。

だが、マネタイズに乗り出す上で、FORXAIにはプラットフォームとして明確に足りない要素があったという。それがAIを動作させるデバイスだ。コニカミノルタや、FORXAI技術パートナーが持つ画像関連技術は、当時ソフトウェアやアルゴリズムといった領域に集中していた。

一方で、そうした技術を産業や事業の現場で動かすには、AIが高速に動作し、かつ信頼性の高いハードウェアが必要となる。しかし、当時FORXAIでは、エンドユーザーの多様なニーズに応えるための高性能なデバイスのバリエーションが不足していた。

「ちょっとしたPoC(プルーフ・オブ・コンセプト=概念実証)であればGPUを搭載したノートパソコンやゲーミングPCを使えば良いのですが、実際に製造現場などで使おうとなると、信頼性の面で提案が難しく、産業用途に適したPCが必要になると考えていました」(吉澤氏)

そこにタイミングよく名乗りを上げたのが菱洋エレクトロだった。菱洋エレクトロは、AI、データサイエンス、ハイパフォーマンスコンピューティングなどに欠かせないGPUで世界的シェアを誇るNVIDIAの一次代理店である。日本国内におけるNVIDIA製品の取扱ラインナップは最も多く、ハイエンドのGPUからエッジデバイス向け小型コンピューター、ワークステーション、サーバーまで、多様な製品を柔軟に提案しているだけでなく、専任のエンジニアによる技術サポートも充実している。

菱洋エレクトロがFORXAIの技術パートナーとして加盟してから両社はさらに注力領域を広げてコミュニケーションを取り始めた。FORXAIにどのような技術があるのか、またNVIDIA製品でのAI関連の事例があるのかといった情報交換から始まり、すぐにFORXAIのマネタイズに向けた事業課題という深いところまで話をするようになった。

こうしたコニカミノルタと菱洋エレクトロのパートナーシップの中から生まれたのが、このスターターキットである。コニカミノルタが持つ画像関連技術を活かしたAIモデルと、菱洋エレクトロにて調達し、起動検証した最新のNVIDIA製品を搭載した産業用PCと周辺機器などを組み合わせ、ソリューションパートナーがユーザーに提案しやすいようにパッケージングしたもの。スターターキットをあらかじめ用意することで、FORXAIに興味を持つお客様に対して素早く価値を示すことができるというわけだ。

「これまで踏み込んだデモやPoCを実施する段階では、NVIDIA製品の開発者向けキットを調達していました。パソコンがあれば簡単にAIは動かせますが、実際の工場などの環境で動かすことや、実装したときのパフォーマンスを検証するには、産業グレードのコンピュータデバイスを用いる必要があります」(小林氏)

「FORXAIでは、すでに開発者キットでPoCを行う中で、課題が見えていらっしゃいました。そのため、私たちも過去のビジネス経験の中で、どういう対処ができるのか一緒に考えることができました」(宮尾)

PoCなどにおいて、実際のデバイスを調達し、それにソフトウェアをインストールしてAIを動かすということは、簡単になったとは言うものの誰にでもできるわけではない。また、数ある製品の中から、AIが動作し、なおかつ実環境での使用や量産に適したデバイスを選定するには非常に手間と時間がかかる。さらに、自身が選定したデバイス上で問題なく起動するかどうかは、実行するまでわからない。いざデバイスを調達し、ソフトをセットアップしてみたら動かない、ということも珍しくない。

そこで、画像IoTのソリューションにおける実環境を想定したハードウェアとソフトウェアの組み合わせで、あらかじめパッケージングすることで、さまざまな事業者に対してアプローチする際、効率的かつ効果的に進められる。場合によっては「これで試してみてください」と渡すだけでよくなり、それによって端的に「営業活動がはかどる」というわけだ。

「AIは、普通のソフトウェアのように書いたものがそのまま動くのではなくて、現場のデータを学習させて初めて動きます。ですから、AIが本当にお客様の課題を解決できるかどうかは、現場で動かしてみないとわからない」

「一方、現場で試してみるには、デバイスの調達、セッティング、ソフトウェアのカスタマイズといったことが必要です。試すといっても、簡単な開発みたいなものでハードルが高いです。ソリューションパートナー様とお話しする中で、そのことを強く感じていました」(小林氏)

コニカミノルタがハードウェアという課題に直面したとき、タイミング良く現れた菱洋エレクトロ。両者が打ち合わせを重ねる中で、スターターキットのアイデアにたどり着くのには、さほど時間はかからなかった。

「2022年の春頃に最初にお話をして、同じ年の冬には具体的に進める方向で動き出しました」(吉澤氏)

現在、最初のお客様に向けて、NVIDIAのJetson AGX Orinシリーズを使ったスターターキットの仕様策定と検証を進めている。これが完成すれば、類似の業界に向けての営業活動が格段に捗るはずだ。

AIの精度を求めるとNVIDIAのGPUが必要になる

コニカミノルタが、菱洋エレクトロと協働して取り組んでいるスターターキット。エンドユーザーにとっては、すぐに動かせるということだけでなくNVIDIAのGPUを搭載していることがアドバンテージになっている。

というのも、ハードウェアにNVIDIA® Jeston AGX Orin™ シリーズ、つまりGPUを搭載した高性能小型コンピューターを採用していることで、現在の企業によるAIに対する“精度”というニーズに対応できるからだという。

コニカミノルタでは、CPUのみでも十分に動くAI技術を持っており、実際にさまざまな場面で利用されている。だが、一方で「速くて軽いのはいいけれど、精度が欲しい」という要望が目立つと小林氏は話す。

「案件を検討する中で、速くて軽量もいいけれど、精度がこれだけ欲しいという声がある。その時に、GPUを積んだデバイスじゃないと対応できない」(小林氏)「高精度の解析をリアルタイムでやりたい、と言われるとGPUが選択肢に入ってくる」(吉澤氏)

またIoTというソリューションでは、精度だけでなくさまざまな要因で求められる要件が異なってくる。通信状態が万全で多くのトラフィックがさばけるなら、生データをすべてクラウドに送り、クラウド上でAIを使うことで低コストと高パフォーマンスを両立できる。

 

しかし通信回線が乏しい、できるだけレスポンスを高くしたい、といった場合にはエッジでの処理が必要となる。そこではJetsonシリーズのようなGPU搭載のエッジデバイスが強い。

 

デバイス認定された AAEON社製「BOXER-8641AI」

「現場では、GPUを積んだ小型コンピューターの競争力が大きいです。もちろん、Jetsonシリーズにも色々なラインナップがあるので、エンドユーザー様のご要望に対し、もっとも適切な製品をご提案できます。現在のキットに採用いただいているJetson AGX Orinシリーズは、松竹梅でいう松に相当します。竹と梅が欲しいという声をすでにいただいていますので、近いうちに揃えていきたいです」(宮尾)

スターターキットのラインナップには、パフォーマンス以外のニーズもある。「簡単に動かせる」というスターターキットとしての目的のため、現在は1つの特定分野に向けたものとして開発を行っている。だが、今後、さまざまな分野の事業者に向けたスターターキットのバリエーション展開を予定している。

「ソリューションパートナー様によって、得意とする分野が違います。今後は希望されるパートナー様に入っていただいて、ご意見を聞きながら作っていくことになります」(小林氏)

こうして、複数のソリューションパートナーと共に新たなスターターキットを順次開発していくことによって、さまざまな業界、分野に対応したスターターキットのバリエーションが横展開できるというわけだ。

「1つのキットを色々なお客様にカスタマイズして提供していくことと、色々な業界に水平展開していくこと。両者を戦略的に考えながら、商材としてのラインナップを広げていきたい」(吉澤氏)

こうした製品の展開が可能なのは、プラットフォームであるFORXAIにさまざまな企業がパートナーとして参加しているからこそだ。そして、プラットフォームとしてのFORXAIの展開を支えていくためには、エンドユーザーのニーズに対して適切な技術パートナーをマッチングさせることが必要だ。そして、それこそがコニカミノルタの強みでもある。

「国内外61社の各パートナー様とは継続的にコミュニケーションをして、技術の内容だけでなく会社としてのキャラクターの把握にも努めています。企業と企業のコラボレーションは、技術の選定が適切なだけでなく、会社同士、担当者同士の相性も重要です」(小林氏)

プラットフォームとは、単にマッチングや連携の基盤を作るだけでなく、それらを細部にわたって目を配りながら運用していくことが大切だ。小林氏も「パートナー様とエンドユーザー様の相性はあります」と言い、吉澤氏も「そこに注意して柔軟にフォローをしている」と話す。

そして、そのコニカミノルタの目から見て、菱洋エレクトロは「熱意を持ったペースメーカー」だと言う。

「新しいビジネスは、道なき道を進むようなもの。どのくらいのペースで進めばいいか分からないので、寄り添いつつペースメーカーとして適度に背中を押してくれるというイメージ」(吉澤氏)

こうした関係を築いてきたことによって、コニカミノルタと菱洋エレクトロは、今後さらにパートナーシップを強めていく予定だという。

「技術パートナーとしてだけでなく、営業面でもがっちりと組んでいきたいと思います」(斉藤)

「お互いに本気でやっていきましょう、ということで進めています」(吉澤氏)

AIやIoTなど、特にプラットフォームと呼ばれる規模のサービスやプロダクトは、ビッグテックと呼ばれる海外のIT企業が強い競争力を持っている。そして日本全体でDXを進めていくためには、多くの企業やプレイヤーを巻き込んでいくプラットフォームは強い推進力となるだろう。

一方でビッグテックのプラットフォームは、利用者のニーズと細かなところで“合わない”ということもある。大きなプラットフォームだからこそ小さなニーズをくみ取れず、結果的にエンドユーザーに使い方を押しつけるような場面は、しばしば見られるものだ。

だが、FORXAIは画像IoTのプラットフォームを標榜しつつも、一面的なソリューションを展開するのではなく、技術パートナーやソリューションパートナーとエンドユーザーを丁寧にマッチングしながら進めていこうとしている。そして、その丁寧さとスターターキットの存在は、今後エンドユーザーにとってのAIに関してだけでなく、日本社会のDXを進めていくための入口のひとつになっていくだろう。

 

会社名:コニカミノルタ株式会社
企業URL:https://www.konicaminolta.com
事業概要:以下製品の開発・製造・販売及び関連サービス等の提供

  • 複合機、デジタル印刷システム、関連消耗品

  • 医用向け画像診断システム、遺伝子検査、プライマリケア関連サービス、創薬支援

  • 計測機器、ディスプレイに使用される機能性フィルム、産業用インクジェットヘッド、産業用レンズ

  • 画像IoT及び映像関連機器

本社住所:〒100-7015 東京都千代田区丸の内2-7-2 JPタワー

関連製品/ソリューション

CONTACT

ご依頼・ご相談など、お問い合わせは、
下記フォームからお願いいたします。

お問い合わせ